連続講座2006「自然エネルギー」
どうする?これからの環境とエネルギー |
★持続可能な社会への一歩
バイオマスエネルギーの活用
講師 本庄孝子氏(阪南大学)
★ワークショップ〓
使用済み天ぷら油からBDFを作る実験
講師 田原誠一郎氏
(長岡京市 環境の都づくり会議)
★ワークショップ〓 バイオマス双六
担当 事務局
お正月気分が抜けきらない2007年1月8日(祝)の午後、京橋ビギンホールで、最近、世界的に注目を集めており、東アジアサミットでのエネルギー安全保障に関する首脳宣言でも「バイオ燃料の推進」として取り上げられている「バイオマス」の講習会が上記の3部構成で開催された。当会の連続講座としては初登場である。
■バイオマスエネルギーの潜在量は充分、
貧弱な政策変更に不可欠な市民の力
本庄氏の講義は温暖化の進行の現状の説明から始まり、S40年以前の民生エネルギーは殆ど薪炭のバイオマスエネルギーであったこと、日本や世界のバイオマス潜在資源量、日本はバイオマスの導入は諸外国に比して遅れており、折角の天然林が手付かずで腐朽等、日本を取り巻くバイオマスの現況を話された。
続いて、日本のバイオマス総合戦略の現況、国産バイオ燃料の推進と言ってはいてもバイオディーゼルオイルについては補助金対象にならないこと、90%以上を輸入に頼る方向であること、環境省が導入予定だった環境税が、もし導入されていたらどれだけの効果が期待出来たか等が話されると、会場からは日本のバイオ推進政策の貧弱さに怒りの声があちこちで上がっていた。
また、バイオ燃料ブームへの警鐘の話もあった。
先進国で製材が元気でないのは日本だけ。諸外国との政策の差を埋める力は、やはり住民の意識だ等、普及へのポイントの解説で講義は終了した。
54枚のパワーポイント画面を使っての熱のこもった講義は、バイオマスエネルギーについて系統だった話を殆ど聞いた事のない私にとっては、非常に興味深い講義だった。
■ BDF、作るのは簡単、
実用的な製品化は難しい
BDFのワークショップは実験時間の都合上、2部に分れ、本庄氏の講義の前に、まず原料を混合しておき、ワークショップ〓終了後に出来上がった製品を前に解説を受ける、という形で進めれた。
田原氏が実験展示をはじめた動機は、BDF関連のイベントや製造施設の見学では、廃食用油やBDF製品の展示や反応装置の見学が中心であることに満足できず、「廃食用油がBDFに変わる様子が知りたかったから」とのこと。氏はこの他にも、自宅の庭でビニールシートで雨水を回収したり、太陽光発電システムを設置して、系統連係せずにテレビの電源として活用、さらにはソーラー利用の庭園灯を設置等、根っからの自然エネルギー派、行動派とお見受けした。
実験道具は全て日常目にし、簡単に入手出来るものばかりであることにまず驚いた。製造するのはいとも簡単。原料の油は、実験の手数と時間の関係で今回はサラダ油を使用、これにメタノール、苛性ソーダを混ぜ、後は反応温度を時々確認し、後は約3時間の反応時間を待つだけ。誰でも出来るとのことだったが、実験上の注意事項も2、3点あると説明された。
ディーゼル車への影響、バイオマスディーゼル燃料の利点等、更には長岡京市での取り組みの様子も報告された。ボランティアで活動する個人、企業のあたたかい輪が大きな力になり、着実に成果を上げておられる。
「実験展示にはどこへでも出向きます」とのこと。実験を見るだけでなく活動の様子も併せてお聞きすることをお勧めしたい。
■ 童心に返ったバイオマス双六
双六はバイオマス原料の製造コースと消費コースを行き来するもので、各自1000点を持って行う。参加者が3グループに分かれて行った。
サイコロを振って進んだ升目に書かれた内容が環境保護に繋がれば加点、環境破壊に繋がるものは減点。効果の程度によって同伴競技者全員からボーナス点がもらえたり、逆に罰金として全員に持ち点を進呈しなければならなかたりして、途中で借金する者も出てくる。目まぐるしく持ち点が増減し、皆一気に童心に返って熱中。
各升目に書かれている内容は、非常に広範にわたるもので、参加者からはよく考えてあるなとの声が出ていた。大人にとっては絶好の息抜きである。
子供達も簡単に行え、遊びながらバイオマスの勉強が出来るが、遊んだ直後、即ち、升目の内容が頭に残っている間に、解説を楽しく行ってやれば、正に「遊びながら学ぶ」ことに繋がるだろうと思った。
■ 質疑
バイオマス双六を行う前に、講義への質問・意見・感想をグループ毎に出し合い、その結果は、双六の最終持ち点発表と併せて発表された。
その中で多かった意見は、日本のバイオマス政策に関するもので、この夏の参議院選挙時の各党のマニフェストに環境問題を入れさせる、また、監視する運動を、金にならないものには力を注がない政治家の姿勢が問題等であった。
また、安価な輸入材と高価な国産材の価格格差の原因は?、BDFの製造廃液の環境への影響は?等の質問も出ていた。
これらについて講師の方から補足説明と回答があり、また、参加者からも活発な意見が出されていた。
最後に、事務局が「バイオマスは意外に身近。学ぶだけでなく、市民一人一人が身近に取り組める活動を探そう」と講座を締めくくった。
(文責 大谷)