身近な家庭用の太陽熱温水器の研究会
実績報告、設置検討中等テーマを持っての参加に感謝
私達にとって一番身近なエネルギーの一つである太陽熱、それを利用する太陽熱温水器の設置台数の伸びはかつての勢いは全くない。そこで、太陽熱エネルギーの可能性と多様な利用システムを再確認し、その中でも市民が取り組み易い家庭用の太陽熱温水器について、その基礎知識やその温暖化防止効果、そして、各国の普及状況と日本の課題を学び、その普及拡大を目指そうということで、2007年12月1日、大阪社会福祉指導センターで太陽熱エネルギー利用研究会を開催した。
会場には、大阪友の会の会員の高田さんが自宅に設置した太陽熱温水器について、その平均給水温度と平均湯温を1年間測定した記録の巻物と、同岸さんの手作りの太陽熱温水器の写真を掲示されてもらった。会場に入った参加者は壁一杯に貼られた巻物の迫力と、とても手作りとは思えない温水器の写真にまず驚きの声を上げていた。
研究会は、当会の企画部会で勉強してきた「太陽熱エネルギーの可能性と多様な利用システム」ついて、企画部会を代表して安田寿夫さんが発表した。参加者からは「家庭用の温水器だけでなく、公共の場や福祉施設で多様な形での利用方法があるのですね。政府や自治体が支援してくれれば、設備数が増えてその効果を実感する人が増えて広がっていくのに」の感想が寄せられた。
続いて、講師の浅井俊二様(矢崎総業株式会社)に「太陽熱利用とその実力、太陽熱利用と普及への課題」について、専門家の立場からわかりやすくご講演いただいた。
まず、前半は「住宅の消費エネルギーのうち50%程度は低温利用で太陽熱温水に適している。太陽熱利用は太陽光発電システムに比してはるかに効率が良く、冬場でも夏場でも(温水温度―給水温度)はほぼ同じである、即ち、同じ熱量が給水に与えられている」と基本的なお話をいただいた。メーカーの方でありながらメーカーの立場を離れて日本太陽エネルギー学会の会員としての客観的な講演で、その内容がよく理解出来ただけでなく、お人柄も感じるとなかなか好評で、世話役として良い方に講師になっていただいたと喜んでいる。
後半は、温暖化がどんどん進んでいるのに、「日本の太陽熱利用の状況は世界各国に比して大きく遅れている」と具体的な数字を挙げて説明され、その原因は「国や自治体の政策、環境教育の欠如、国民の環境・エネルギー問題の理解不足、太陽熱利用を知らない世代の増加」と熱っぽく語られた。
「人間が活動すれば必ず「ゴミ」が出る。このゴミの処理には大きな労力をかけ、お金を出しているが、排出されたCO2はそのままほったらかし。あまりにも労力もお金のかけていない。これで良いのか」のわかりやすい説明に、多くの参加者は頷いていたように思う。
質疑応答では、参加者から太陽熱温水器を使用しての実績報告や「今まで24年間使っていたものを老朽化で撤去した。新しいものを設置したいので勉強に来た」と明るい話も飛び出した。
太陽熱温水利用は身近なだけに、質問も具体的で参加者も明確なテーマを持って参加いただいたようである。今回は総論的な話で終わったが、次回は「家庭用の実践編」「業務用太陽熱温水器の実例とその拡大について」等で開催出来ることを願っている