普及を抑制するRPS法から固定価格買取制の導入へ
温暖化防止のためには、化石燃料から自然エネルギーへの転換を根幹とする政策措置が求められます。しかしながら、現在の日本の政策はそれにブレーキをかけるものになっています。その現れとも言えるのが、2003年4月から施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(通称RPS法)です。本来のRPS法は、割り当て制とも言われ、電力会社などのエネルギー供給事業者にその供給量のうちの一定量を自然エネルギーで供給することを義務づける自然エネルギー推進のための政策手法です。イギリス、オランダ、イタリア、アメリカのテキサス、カリフォルニア、コロラド、ニューヨーク州などでも実施されています。
しかしながら、日本では、RPS法によって定められた2010年までの新エネルギーの導入目標が1.35%と各国と比べても大変低く、さらに対象となる新エネルギーの中には太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、小水力発電に加えて廃棄物発電も含まれるなど問題点が多いものになっています。資源エネルギー庁が発表したRPS法の2003年度実施状況によると、目標量の大半はこの廃棄物発電によって占められています。風力発電については、RPS法で定められた目標値が低いことに加えて、価格や売電の条件の設定が電力会社に委ねられているために、北海道や東北などでは、多くの風力発電事業者による申請が切り捨てられ、さらに買取り価格自体も大きく低下してきています。
現状を見る限りでは、自然エネルギー普及のための政策であるはずのRPS法が、日本では(1)低い目標値、(2)新エネルギーについての定義、(3)電力事業者に任せられた運用、などの問題点から自然エネルギー抑制法として機能してしまっています。
京都議定書の発効を受けて脱温暖化・持続可能な社会を構築していく上では自然エネルギーの普及が不可欠です。そのためには、国が高い目標を掲げ、急速な普及を牽引する誘導的施策として、ドイツに見られるような自然エネルギー固定価格買取制度へとRPS法を転換してゆくことが求められています。
図:日本とドイツの風力発電導入実績の比較
ドイツでは1991年にエネルギー供給法を施行し、その後急速な成長を遂げました。さらに2000年から始まった再生可能エネルギー法により爆発的な伸びを続けています。
※【エネルギー供給法】
風力発電や太陽光発電からの電力を、電力料金の90%の価格(変動価格制)で全量買取ることを保証する施策。
※【再生可能エネルギー法】
自然エネルギーの種類ごとに、その買取り価格を定めた(固定価格制)施策。施行後の2001年は単年度で264万kW、2002年320万kWと大きく増加しています。なお、2004年8月には、大口需要家に対する負担措置の軽減や買取り価格を見直す改正再生可能エネルギー法が施行されました。