声明「膨大な太陽光発電の出力制御を中止せよ」

8月3日に開催された経産省の新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループにおいて2023年度の最新の出力抑制の見通しが示された。
各送配電エリアの出力制御率の見通しは半年に1回更新されており、今年4~6月の実績を踏まえての変更である。
それによると、2023年度に出力制御される電力量は17.6億kWhにもなり、それは475億円分に相当し、世帯数にすると約41万世帯の消費電力量が無駄に捨てられることになる。
この事態に対し自然エネルギー市民の会は、声明「膨大な太陽光発電の出力制御を中止せよ〜CO2削減、社会的損失と電気料金の低減に向けて、限界費用の低い再エネ電力を優先供給すべきである〜」を発表した。
pdf-ico声明「膨大な太陽光発電の出力抑制を中止せよ」

以下に全文を掲載します。


膨大な太陽光発電の出力制御を中止せよ
〜CO2削減、社会的損失と電気料金の低減に向けて、限界費用の低い再エネ電力を優先供給すべきである〜

2023年9月4日
自然エネルギー市民の会

電力は常に需要と供給が同程度のなるように調整しなければならず、電力需要が少ない時期には出力制御が実施される。現在、わが国では、原発をベースロード電源として優先供給し、石炭火力発電や天然ガス火力発電は最低出力まで抑制(現在は50%程度)、揚水発電の活用や他地域への送電を実施した上で、変動性再生可能エネルギー(太陽光・風力)発電の出力制御を無制限に行っている。

最近、その制御量が急増しており、変動性再エネ電力の出力制御は東京電力管内以外の全地域で実施されている。経産省の最新の見通しによると、2023年度に出力制御される電力量は合計17.6億kWhにもなり、約41万世帯の年間消費量に相当する。家庭での平均電力料金(約27円/kWh)をかけると475億円分の価値がある。限界費用(発電に必要な燃料代)がほぼ0で発電できる再エネ電力を無駄に捨てていることになり、社会的に大きな損失をもたらすだけでなく、電気料金の高騰にもつながる。また、一定の火力発電を稼働させることによりCO2排出量を増加させ、気候危機を増幅させる。しかも、出力制御は無制限、無補償で実施されるため、再エネ発電設備所有者に不利益をもたらすことになり、再エネ普及を抑制しかねない。

諸外国の電力供給では、限界費用が低い電力を優先し、再エネ電力は原発や火力発電よりも優先供給される。原発でも負荷追従運転による出力抑制は可能で、原発大国のフランスでは日常的に行われ、再エネを優先供給している。今年3月まで原発を稼働させていたドイツでも、再エネ電力を原発より優先供給し、石炭火力や天然ガス火力をまず無制限に出力制御し、次いで原発、最後に再エネ電力を制御している。日本でもこうすれば、石炭や天然ガスの消費量とその費用負担、さらにCO2の排出量も削減でき、エネルギーの安全保障にもつながる。再エネ普及が進むドイツなどでは、再エネ発電だけで電力需要を超える場合もあるが、その余剰電力を蓄電池に貯蔵したり、水の電気分解で水素製造に利用し、無駄に捨てたりしない。しかも、制御された再エネ電力分は補償される。

気候危機防止、社会的負担と電気料金の低減のためにも、直ちに太陽光発電の出力制御を中止し、電力供給は限界費用の低い再エネ発電を最優先すべきである。また、原発の再稼働や新増設をやめ、豊富な再エネ資源を活用して再エネ発電100%の社会を目指すべきある。

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